2月の終わりに、DSATのXに、ある問い合わせがありました。

「能登町で被災し屋根がダメになり着物がびしょ濡れになってしまいました。DSAT様では着物はお取り扱いなさっていますでしょうか?個人では限界がありお聞きしたくDMさせていただきました。宜しければお返事頂きたいです。」

状況をお聞きすると、被災した家の屋根の瓦が落ちてしまい、そこから入った雨水で着物がびしょ濡れになってしまい途方に暮れていると・・・

結構厳しい状態。預かって洗うのに躊躇するクリーニング屋さんは多いと思います。

でも、DSATの洗濯支援の基本姿勢は、受ける品物にこれはやるこれはやらないと線を引くことをせず、「全部受ける」です。

物理的に本当に無理なもの以外は、全部何とかする可能性を探る。

当然、依頼があったこの着物も、受けないという選択肢はないので、受ける前提で動きました。

それは、DSATには心強いメンバーがいるから出来ることです。

今回の着物は、長野県須坂市の近藤さんにお願いをしました。

須坂も着物を着る文化がまだ残る街。

近藤さんは普段から、着物のクリーニングや染み抜きなどを手掛けています。

頼るしかない。

石川の品物を県外に出すことになるので、一旦、石川県のメンバーに確認をして了解をもらった後・・・

「近藤さん、被災して雨で濡れてしまった着物の依頼があるのですが、受入可能ですか・・・??」

普通は躊躇する依頼。こちらもちょっとドキドキしながらLINEで聞いてみる。

すると・・・

10分後くらいに既読になってすぐに、

「ついにこの言葉を言う時が来たか…」

「クリーニング屋の本気を見せてやる!」

ここにも頭がおかしい人がいた(笑)

即答できるのすげーなと思った。

以前にもちょっと書きましたが、この近藤さんは長野市のスーパー染み抜き職人(この人も相当頭おかしい・笑)と二人で2019年の台風19号の千曲川の洪水災害でも無料クリーニング支援を行っていました。

その時も、泥だらけになった状態の着物を預かっていたので、その経験もとても大きいんだと思います。

それにしても、なかなか躊躇せずに出来ることではなく、すごいことだと思う。

3月頭に着物をお預かりして近藤さんにお願いをして、それが先日4月11日に持ち主の方へ無事戻りました。

水の影響で、縮んでいる着物などもあったり、とても気を使う仕事になったと思いますが、すべての着物をキレイにクリーニングして納品してくださいました。

一切、誰からの指示もないけど、シミも抜いてくれていました。

もしかすると震災前よりもいい状態になっているのではないか?とも思います。

支援活動をしていると、何を預かるのか?どう預かるのか??常に悩みます。

でも、困っている人がいて全力で助ける。求めている人がいて、自分の腕を振るう。

できるだけいい状態に戻し、気持ちよく着れるようにする。

それは、普段の仕事でも災害時の支援でも変わりません。

無料でも有料でも、今、自分にできる限りの仕事をして対応する。

そのことに変わりはありません。

今回の着物も、近藤さんが忙しい中、出来うる限りの仕事を提供して支援してくれて、持ち主の方へ無事戻すことが出来ました。

「これはやる、これはやらない」という合理的、事務的な支援ではなく、「全部受ける!」「俺たちに洗わせろ!!」「クリーニング屋の本気を見せてやる!!!」そういうよくわからない意味不明な姿勢で支援すると、批判とかもありますが・・・

やはり、本当に多くの被災者の方から喜んでもらえるなぁと感じます。

そして近藤さんも言っていましたが、自分がやりたいからやるってなると、洗っていて「楽しい。」

それが一番大きい事かもしれません。